設計士ブログ

2025.09.13 #佐藤保宏

工事のはじまり

佐藤保宏

先日「縄張り」という作業をしてきました。カンカン照りの中、監督と二人で汗をふきふき、ぼとぼとになりながら縄を張っていきました。暑さでクラクラしながらも、地面に縄を張ると建物の全体が見えてきます。

縄張り(なわばり)とは、敷地に縄やロープを張って建物の位置や大きさを示す作業のこと。図面では線でしかなかったものが、実際の土地に立体的に浮かび上がってくる瞬間でもあります。(実はこの「縄張り」という言葉、今では動物や人のテリトリーを表す言葉としても使われますが、もともとは建築の現場用語だったんです。縄を使って区画をはっきりさせるところから転じて、日常語になったと言われています。…雑学でした)

特に狭小地では、この縄張りがとても重要です。デスク上でプランや実施図面を作るときは常に現地を頭に浮かべ建物の配置を検討しますが、実際に現地ではその検討が本当に問題がないのか、隣の建物との間隔がどれくらい取れるのか、工事の重機や職人さんが動けるスペースがあるのかなどを確認します。場合によっては「少し寄せないと施工が難しいかな」といった判断が生まれることもあります。この日の縄張りについては変更無し、計算通りバッチリの結果でした。(いつもですけどね!)

お施主様にとっても縄張りは大事な体験です。「玄関はこの辺りか」「庭はこれくらいの広さなんだ」と暮らしのイメージが膨らんでいきます。図面だけでは分かりにくい空間の感覚を、体で感じられる貴重な時間なんですね。

シンプルな作業に見える縄張りですが、実は設計と施工をつなぐ要のような存在。「さあ家づくりの始まりです」。責任の重さと完成までのワクワク感が交差する不思議な時間でした。

設計 佐藤