

2025.09.27 #佐藤保宏
昔の町内といえば、家の前で洗濯物を干していたら、近所のおばちゃんが「どこ行くの?気を付けていきやぁ」と声をかけてくれるのが当たり前でした。
境界も“なんとなく”で、お隣さんの木がこちらにちょっとはみ出していても「そっちの梅の実、今年は甘いねぇ」なんて笑って済ませる。
ところが今は、プライバシー重視の時代。
フェンスはしっかり、窓もすりガラスやカーテンで閉ざして、向かい合う時間も少なくなりました。
お隣さんの家族構成やお子さんお名前を知らないなんてことも・・・。
民法では境界から50cm以内に窓をつける場合はお隣の承諾が必要ですが、ここは「法律だから」ではなく、「お互い気持ちよく暮らすための知恵」と考えた方が、いい家になります。
完全に昔のように境界をゆるくするのは難しいけど、今みたいに完全シャットアウトも寂しいものです。
たとえば、庭の一部だけ低いフェンスにして季節の花を見せる。
玄関ポーチを少し外に開いて、お隣さんと立ち話ができるスペースを作るようにする。
こうした“小さな仕掛け”が、法律の範囲内でご近所付き合いをゆるやかに繋ぎます。
家は家族のために建てるものですが、暮らしはご近所との関係の中で育ちます。
昔と今のちょうど真ん中くらいの距離感を、設計で作っていく。
それが、これからの「ええ家づくり」だと思います。
設計 佐藤